黒い影

ある晩帰宅すると、呼吸困難で横たわっていた。


口を半開きにしたまま、肺なのか心臓なのか、胸の辺りが大きく波打っている。目も虚ろ。そこにいつもの可愛い瞳はない。昼間までは元気に飛び回り食欲も旺盛だったのに。


体をさすると、ガリガリだった…


正月から怒涛の日々で、自分が生きるのに精一杯だった。全く変化に気付いてやれなかった。ダンスをしてあげる事もなく、スキンシップも足りなかった。
一晩つきっきりで、ただただ様態を見守った。翌朝すぐ医者につれていった。正直、朝まで持たないと思ったくらいだ。


数日検査入院。当日即撮ったレントゲンでは、胸部も腹部も全体的に靄がかかっていた。クリアに見える所なし。全身に悪性腫瘍があるのか…


交通事故で下半身を轢かれ3回手術し、生存できても歩行は不可と言われたのが嘘の様に、壁もよじ登るワンパクな黒猫。持って3年との診断も既に3倍は生きている。元気に走り回ってもツギハギだらけの内臓、下半身。とうとう限界がきてしまったか…


検査の結果、原因は色々。解剖すれば判明するだろうが、麻酔に耐えられる体ではないとの事。原因が判明したとて治せるわけでもなく。取敢えず病院では酸素部屋で生活。


退院し、今はいつもの表情に戻った。薬漬けの日々ではあるが。
心臓がかなり弱っているので、大好きなダンスもできないし、いつ何時あの晩の様な容態になるかも分からない。いつ逝ってしまてもおかしくない状況。


変化に気付かなかった自分が憎い
それにしても、獣医は高い