渋谷で桃色-その2

ピンクリボン
http://www.uplink.co.jp/pinkribbon/

監督・撮影・編集:藤井謙二郎
出演:足立正生、池島ゆたか、井筒和幸、小川欽也、黒沢清高橋伴明、田尻裕司、中村勝芳、林田義行、福原彰、女池充、森章、吉行由実若松孝二渡辺護、他

かつての日本映画界の「縮図」といわれるピンク映画の世界を、監督、プロデューサー、俳優、配給、興業関係者たちへの丹念なインタビューを通して描き、日本映画を支えるシステムとピンク映画の現在を白日のもとに現したドキュメンタリー


監督曰く、

いわゆるポルノ映画でありながら、そこから多くの優れた映画監督を輩出するという世界的にも稀有な歴史を持ち、しかし10年後にはなくなるだろうと言われているピンク映画。
或いは、10年後にはなくなるだろうと20年前から言われ続けていながら、今だに生き延びているピンク映画。
この『ピンクリボン』は、そんな摩訶不思議なピンク映画の世界を覗き見たものです。ただし「ピンクは何を表現してきたか?」といった点については、既に多くの評論が書かれ、またビデオ等で過去の作品の鑑賞が可能となった現在ですので、本作では敢えて触れません。
むしろこのドキュメンタリーは、そうしたところからは見えてこない、現実としての映画作り、ビジネスとしての映画産業という側面に焦点を当てたものです。


ピンクやロマンポルノを集中して観ていた時期があったので、元々の知識と合わせる事で、頭の中を改めて整理できた。かつ、実際の撮影現場や配給、フィルム保管など、なかなかピンク映画研究でも日の当たり難い所に手が届き、とても興味深かった。著名監督のインタビューは、これまでも撮られたり書物になったりもしているが、今回、新東宝映画の営業部長(50年近く3社を渡り歩いて営業)、やプロデューサー、映画記録部長(50年以上もフィルム管理)と言った、業界を裏から支えてきた、生き字引の様な方々の話は刺激的で面白い。

監督インタビューでは、若松孝二渡辺護の悪口言い合いが微笑ましい。各監督はピンでのインタビューなんで生で言い合いではないのだが、「ここカットね」と2人共、「あいつは〜」と嬉しそうに悪口(早回しになっていたので、実際の悪口は聞けず)

余談だが、渡辺護の猫ちゃんがかわいい。インタビュー中(多分自宅。バックはチョットはげた砂壁←猫の爪とぎか?で昔ながらの木造アパートっぽい)、突然、渡辺の膝にのり、胸に向かって抱っこ〜の仕草。カメラに向かって渡辺がずっとしゃべっているので、興味を惹きたくなったのか? 抱っこに飽きた後も、しっかりカメラに写る場所でお休みしてた。出たがり?


ただ、一点気になったのが、ピンク四天王が今回、林田義行(ピンク映画専門のミニコミ誌「PG」編集長)の話に出てきただけで、フィルムには一切登場しなかった事。 
後日、SLOW TRAIN のインタビューで納得。
http://channel.slowtrain.org/feature/feature011/part1.html

Q: ピンク映画黎明期を支えた第一人者・若松孝二監督、第二次ピンク黄金期の立役者・高橋伴明監督ら、ピンク映画史のなかでキーとなる歴代の監督たちが続々登場するなかで、作家性を強く打ち出していった“ピンク四天王”という大きな存在が出てこなかったのが、意外だったのですが…。

A: それはもう、散々言われました(笑)。でも“ピンク四天王”関連の書籍やビデオって、(ピンク映画の中では)一番世に出ているんですよね。彼らのことなら、一般の人でもいくらでもアクセスできるし、僕の映画になくてもいいんじゃないかと。

Q: あえて外されたんですか?

A: 5時間の映画を作ってもいいなら、それはまた別の話ですよ。ただ2時間という映画の枠では、どうしたって40年間の歴史を完全に網羅することはできないですから。作家性の部分や、この年代の監督たちはいま他の本で読めるからカットしていこうとか、そういう現実的な意味での人選はしましたね。


そもそもピンク映画とは?
http://www.uplink.co.jp/pinkribbon/bangai.html にうまくまとまってます)

数百万という低予算、平均3日程度の短製作日数という厳しい条件で製作される、東映東宝、松竹、大映、日活というメジャー会社以外の独立系の会社が製作した成人向けの商業映画の総称。“カラミ”の回数など制約はあるものの、監督が比較的自由に撮れるため、数々の優れた映画作家を輩出している。
東宝映画、オーピー映画(大蔵映画)、新日本映像(エクセスフィルム)、国映(製作のみ。配給は新東宝映画に委託)が代表的な製作、配給会社。性描写を描いている点ではアダルトビデオや欧米のポルノ映画と同じだが、アダルトビデオや欧米のポルノではあまり重要視されない作家性やドラマ性と、性描写などの「エロ」が同居するという、世界の映画史の中でも、日本の映画史のなかでも「ピンク映画」とは特異な存在なのである。現在では情報誌にも上映情報が掲載されなくなり、ピンク映画を上映するピンク映画館も都内に10数軒しかなくなってしまったが、日本の年間映画製作本数の3分の1を占める約90本もの新作が製作、公開されている。


小林悟監督の『肉体の市場』(1962年)のフィルムを少しだが観れたし、満足満足。
久々にレイトショーを観て、また映画館通いしたくなった。